映画『こえの形』感想

原作を知らない状態で鑑賞しました。
今回の主題は『ヒットは作品それ自体が出すのではなく、メディアが作りあげるもの』です。

世間では大ヒットしている『君の名は』の傍らで、圧倒的に少ない劇場と上映回数で放映していた『こえの形』でしたが、なかなか良作だったと感じました。元々原作漫画が評価されていたものなのでシナリオは鬱展開ながらも、綺麗に纏まっていました。人の行動や感情の起伏はよく表現されており、概ね理解できるのは評価出来ます。「いじめ」や「鬱病」、「自殺」などのナイーブな問題を取り扱いながら、最後は何とか綺麗なエンドへと収束していく様は、最初こそ嫌悪する鬱展開でしたが、視聴後は満足を与えてくれました。

しかし2時間という映画の制約のもと、元々無かったのか、それともカットされたのか、ヒロインの少し唐突な行動が垣間見えたのは残念でした。主人公の思い悩む描写は良いと思うのですが、ヒロインの行動原理が映画だけだと理解しづらいのが欠点です。耳が聞こえず、声を上手く出すことが出来ないヒロインですが、圧倒的な可愛さだけが映像化されており、本来あったはずの葛藤なんかが描かれていないのです。だからこそ所見の人は「ヒロインは笑顔を絶やさない、なんて強い子なんだ」だと感じてしまい、クライマックスに繋がる花火大会後の衝撃的な行動原理が見えてこないのです。確かにそれまでの展開を見れば、ヒロインに相当なストレスがあったことは理解できるのですが、「幸せの絶頂だと思われた、まさかのタイミングで、その行動?」という理不尽さを感じました。ヒロインのその行動に繋がるキッカケさえ表現されていれば、文句無しだったと思います。強引なシナリオ展開は視聴者に『ご都合主義』の印象を与えてしまい、感動的な部分でも「あざとく」見えてしまいます。

とはいえ、そもそも『ヒロインをあえて描写しなかった』という製作者の意図があったのかも知れません。『表面だけでは見えてこない人の闇』を表現したかったのかも知れません。しかし『表面だけでは見えてこない人の闇』こそ表現して欲しかったです。耳が聞こえず、声が出ないというヒロインのステータスのはずが、逆にヒロインから感情を奪っているように感じました。言ってしまうと、元も子もありませんが、「耳が聞こえない」という内容は「いじめ」のキッカケでしかなく、そこまで上手く使えてなかった気もします。耳が聞こえないことから来る独自のドラマは薄く、本編としては「いじめ」からの「和解」だけでも成立してしまうように思えました。

ただ一つだけ言えることがあります。『君の名は』よりも『こえの形』の方が確実に面白かったということです。『君の名は』はメディアに取り上げられて大ヒットに至ったように思えます。実際内容としては薄く、映像以外はあまり褒められたものではありません。しかし『こえの形』は不十分ながらも、しっかりと人の行動原理が描かれており、感情移入することが出来ました。やっぱり「ヒットは作品それ自体が出すのではなく、メディアが作りあげるもの」というマスメディアの本質を強く感じました。

最後に、京都アニメーションが作るキャラは全て「けいおん!」に見えてしまうのは、私だけでしょうか?

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Category: 手書きイラスト
Published on: Thu,  27 2016 07:23
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