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「心から楽しむ」難しさ【2/3】

2016/10/04
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大人になるということは、楽しめなくなることなのか?
今回の主題は「不満足なソクラテスより、満足した豚の方が良い」です。

古代ギリシャ哲学で次のような言葉があります。「満足した豚よりも、不満足なソクラテスの方が良い」。この意味は、何も考えず、何も知らない畜生よりは、何かを考え、結果何も知らないことを知っている人間の方が良いということです。これは人間の知性の優位性を物語っています。何もかも知っている気持ちになって快楽を貪るよりも、自分の矮小さを自覚し、知識を探求しようとする賢者こそが価値がある。後に「無知の知」という哲学の根幹を雄弁に主張するようになります。

哲学を専攻した若い私は、それこそが人の正しい道だと信じていました。覚せい剤などの薬物に手を染めない理由、それは豚になりたくないからです。たとえ不満足でも人間でありたい。それこそが知性ある人生を送る為に譲れない境地でした。宗教なんて持ってのほか。何かに祈る暇があれば、努力すべきだ。それこそが自分の人生を切り開くはずだ、と。私はまるで少年漫画の主人公のように考えていたのでした。

しかし、大人になるにつれて、つまり現実に触れるにつれて、考えは変わっていきました。努力だけではどうにもならないことが殆どです。人生を過ごすのに必要なのは、努力ではなく、上手く世の中を渡る処世術でした。自分の正義を掲げることは、百害あって一利ありません。上司には従うべきだし、お金を稼ぐためには我慢をするべきです。学校で勉強したことが社会で通じるわけではありません。点数や成績が人生を決める学生時代は終わったのです。

そんな中、いつしか「心から楽しむ機会が減った」ことを実感します。趣味において、それは顕著に表れます。壁一面に張り付けていた二次元の美少女ポスターは影を潜め、抱き枕カバーは勿論、ベットシートも等身大美少女が描かれていました。積極的にイベント即売会にも参加したし、声優のライブにだって行って、ペンライト一つで必死に声を上げていました。

社会人になるにつれて、実際自由な時間は激減します。それでも続けようと思えば続けることが出来たはずです。しかし会社で上手く渡れるほど器用ではない私が、次に考えることは「貯金」です。仮に会社を辞めてもしばらくは生きていけるだけの蓄えが欲しい。その思考の根源は、常に「逃げの一手」でした。そうして人生から逃げて、逃げていくうちに、いつの間にか「自分自身の楽しみ」も逃げてしまったようです。

私は今、意図的に趣味を続けています。ドールやフィギュアなど本当は無くても何も問題はありません。それでも私は敢えて趣味を続けます。それは失った自分の楽しみを探すためです。不満足なソクラテスよりも、小さいことでも幸せを感じることの出来る豚になりたい、そう思うようになっていました。

では、どうすれば「満足した豚」になることが出来るのか。意外に長くなってしまったので、今日はここまで。


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さつき
Admin: さつき
兵庫県三木市出身男性。高校までは地元で育ち、18歳で京都へ上京する。立命館大学では哲学を専攻し見聞を広めた。中学生から始めた小説創作は、大学の文芸サークル卒業するまで続く。22歳で愛知県名古屋市の業務用厨房機器メーカー営業職に採用され、学校給食センターや病院などに販売及び納入した。28歳で結婚し、翌年に転職。現在は愛知県武豊町から食品メーカー物流部事務職として会社へ通勤している。32歳で一子を授かり、ドールと子育ての両立を目指す。趣味はアニメ鑑賞と銭湯巡り。
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