ドール恋愛記【03】始まりの日

始まりは一本の電話でした。
今回の主題は「いつもと違う日」です。

『彼女』はよくお酒を好む女性でした。ビールを皮切りに、カルテルからワインまで何でも飲んでいました。また彼女はタバコを嗜む女性でした。お酒の入ったグラスを片手に、ロゼやピュアニッシュモなどの銘柄を、何度もその細い指で口元に運んでいました。どうやら入学前に浪人したとのことで、同じ学年ではあったものの、私より歳は3つ上でした。快活ではあったものの、そのどこか落ち着いた雰囲気は、きっと彼女の豊な人生経験から来るものだったのしょう。少し色味の入ったセミロングは決して嫌味がなく、サークル内でも「姉御肌」としての風格を持っていました。

私と彼女との関係は、よく言うサークル仲間でした。お互い酒を嗜むことから、酔いに任せて下らない会話を何度も繰り返し、カラオケでは有り余る若い力を、二人でなりふり構わず歌っていました。本来女性経験の無い私は、女性と会話するだけで胸の鼓動が早くなり、手に汗が滲み、挙動不審に陥りがちなのですが、彼女の前では違っていました。私にとって彼女は「男友達」の一人でした。その理由は前回話をした通りで、彼女は既にサークル内で副部長と付き合っていたためです。

そんなある日、始まりは一本の電話でした。
――カラオケしたいから、今からいい?
アルバイトをしていたものの、基本的に大学生は「週休7日制度」です。特段断る理由もなかったので、二つ返事で回答をし、すぐさま上着を羽織りました。冬が顔を除かせる11月の日の入りは早く、手袋をした手が自転車のハンドルを握った時には、すっかりと辺りは暗くなっていました。

大学から最寄りのカラオケは、いつでも学生で賑わっていました。狭い個室では若者が汗を流して、一目を気にせず、自分自身を表現する唯一の場所です。私を含め、彼女もそんな一人で、事あるごとに人数を集めて、足を延ばしていました。円の中心はいつも彼女でした。だからこそ、私は誰か他の人も来るものだと勘違いしてしまったのです。

二人きりのカラオケは初めてでした。当然二人しかいないので、一人が歌い終えるとすぐに自分の番となります。少し戸惑いを覚えながらも、それでも私自身カラオケは好きだったことも功を奏して、別段気にすることなくマイクを握りました。そんな姿に彼女は目を細め、いつも通りタバコの灰をトントンと灰皿に落としていました。

退出の電話が鳴ったのは入店から二時間後でした。外はすっかり暗闇が全面に出て、木枯らしが頬を濡らします。彼女とのご飯はいつも居酒屋でした。干からびた喉にビールは心地よく、香ばしい焼き鳥は、次々と本数が増えていきました。彼女の酒豪ぶりも遺憾なく発揮され、ふと気づくとラストオーダーとなっていました。

普段ならば、ここで一日の行動もラストオーダーとなるわけだったのですが、続きはまた次回。
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Category: 僕は友達が少ない
Published on: Fri,  25 2016 19:00
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2 Comments

鳴らない携帯  

No title

こんばんは。

女性と会話するだけで、緊張するのは、わかりますね。
僕もそうなのでw

同人イベントに参加するようになってから、
ようやく緊張せずに会話できるようにはなりましたが、
同じ趣味と言う事で緊張しないように、なったのかもしれないです。

2016/03/25 (Fri) 20:45 | REPLY |   

さつき  

Re: No title

いつもコメントありがとうございます。

当時はどうしても女性を意識してしまうと、上手く話すことが出来なかったですね。ただし、女性だと意識しないと楽しく会話出来ていました。それは相手にとって失礼にあたるのですが、私にとっては、その方法しかありませんでした。

後は言われるように、飲み友達やカラオケ友達として見ていたからこそ、女性を強く意識せずに会話が出来ていたのだと思います。

ただし、相手が自分のことも男性として見ていないはずだと思い込んでいたのが、誤りの要因だったのかも知れません。

2016/03/26 (Sat) 00:25 | REPLY |   

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